【精神】 (レビュー)

【こだわりの品(しな)】
想田監督は前作『選挙』と同じように、音楽なし、ナレーションなしの静かな作品を作った。静かではあるけれども、登場する精神病の患者さんたちの体験談には、袋小路にはまってしまっている悩みも多く、決して安閑としてはいない。中にはそれを笑いに変えようとしている人もいるけど、それは笑わって済ませるしかない部分もあるのでは、と思う。
実際の撮影期間は1ヶ月だったそうだが、これでも患者によっては許可が下りず、使用できないものもあったようで、それ以外で、これだけの面白い(誤解されては困るけど、患者さんたちを笑うのではなく、感情移入など患者さんたちに近い気分にさせ、作品として興味を持たせるという意味である)シーンをつなげたのは、監督のセンスの賜物だと思う。自分もドキュメンタリーを撮っているので、その苦労は多少なりともわかるつもりだ。もちろん、一般客にそんな苦労は関係ないのかもしれないけど…。
しかし、作品を観る前は精神科の療養所が舞台と聞いて、僕は患者は知的障害者の方々かと思ったもの。そういう人たちではなくて、見た目はホントに普通の人と変わらない患者の人たちである。うつ病であったり、一人で部屋にいると人の声がする、というような人々を一人ずつ丹念に追っている。それもうわべだけの描き方ではない。というか、本人が「こういうことがあったんです」という告白めいたものまである。人によっては衝撃的な内容のこともしゃべっているのだけれど、そこまでしゃべらせた想田監督も大したものだと思う。
なかなか描かれたことのない、メンタルな部分の連続はこれまた人によっては敬遠することも多いかと思うけど、患者の人たちも、一応、健常者と言われている我々と、そんなに変わることがないのだと思えると思う。事実、僕はその後、街中で普通の人々を見てると、映画の中に入ってしまったような錯覚を持ってしまった。もちろん、そんな人の中にも、精神的に悩んでいる人は多いのだろうけど…。(越智)


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