【パンドラの匣】 (レビュー)

【こだわりの品(しな)】
太宰治の生誕100周年ということと、その名声に乗っかろうということで最近は彼原作の映画がいくつか製作されている。昔からの太宰ファンにとっては何を今更の感ではないだろうか?それに太宰の作品をまっとうに映画化できるほどの監督など、いるのかどうかということも…。
この作品もそういう原作ものであるが、冒頭から主人公のモノローグによって物語が進行していき、大変、無難ではあるが、見やすい感じの作りになっている。
主人公が結核になり、ある療養所に入るというのは太宰本人の体験談だろう。ただ、この療養所、そこにいる人々の掛け合う文句が独特のものがあって、それがただ変な気持ちにさせるのではなく、リズム感よく、耳に心地よいのである。
主人公たち病人(いずれも男)は世話してくれる看護婦(というのだろうか?)たちと恋愛対象として、キャッキャッ言い合いながら暮している。まるで学校のような風景なのだ。けれど、それは結核という明日をも知れぬ病を忘れさせてくれる一つの方法なのかもしれない。現実逃避かもしれないが、人間の素直な感情であろう。
この心地よいモノローグ手法が全編を通して続けば良かったのだが、なぜだか、途中で心地の悪い進行の仕方に変化していく。もったいない。監督だけでなく、プロデューサーなど、周りのスタッフはこのような変化をどのような思いで見つめていたのであろうか?映画は総合芸術なのに…。(越智)


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