【白い船】
島根県平田市塩津集落。日本海を眼下に見下ろす断崖絶壁に、戦前に建てられた木造校舎の小学校。全校生徒数20名足らず。
女性教師、静香・26才は、生まれ故郷近くの塩津小学校に赴任してきたばかり。しかし、初出勤の足取りは重い。島根県の県都・松江市での仕事ですっかり自信をなくしていたからだ。その脇を子供たちが元気良く走り抜けていく。静香を中心に5、6年生が輪になる。児童数が少ないために5、6年生の合同授業が行われている。おしゃべりはするくせに先生にストレートに向けられる瞳、瞳。質問も飛んでくる。
そんな中、心ここにあらず、といった風情で窓外を見続ける6年生の好平がいた。「白いものが動いていくよ」。屈託のない叫びに、静香はつられて窓の外に目をやった。どこまでも広がる青い海原。静かに呼吸しているように動いている。キラキラと陽の光を跳ね返し、透き通っていたり、白かったり、青かったりする。その海の上を白いものが動いていく、という。
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