【精神】

外来の精神科診療所「こらーる岡山」には、統合失調症や躁鬱病、摂食障害、パニック障害、人格障害、その他様々な神経症を患う人々が通っている。その顔ぶれは老若男女幅広く、発病の理由も、病気との付き合い方も様々。働きすぎて精神的に追い詰められ、休職を余儀なくされたサラリーマン。「足が太い」と言われたのをきっかけに拒食症になった女性。周囲に理解されず八方塞がりの中、生まれたばかりの自分の息子を死なせてしまった母親。自殺したり、自殺未遂を繰り返す人もいれば、何十年も病気とつきあい、自らの哲学や信仰、芸術を深めていく人もいる。親や友人にすら病気のことを隠している人もいれば、心の病にまつわる誤解や偏見をなくそうと積極的に講演活動をしている人もいる。
しかし共通するのは、彼らが抱えている様々な心の問題や機微は、現代日本に生きる人間なら、病気の有る無しに関わらず、誰にでも身に憶えがあるであろうということ。それは健康な人にとっても、決して対岸の火事ではない。病気を患う人の精神世界を照らし出した本作は、患わない人の精神世界をも浮き彫りにし、正常と異常、正気と狂気、健常者と障害者の境界線を曖昧にさせる。「正常」で「正気」なのは、いったい誰なのか?観客は映画によって、自問自答の螺旋階段へと誘われ、自らの世界像の振動や変容を余儀なくされるのだ。

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